2019年、感想記事ふたつ目になります。
今回は今まで当ブログで感想をあげていた作品群とかなり趣の異なる作品の感想記事を書いていきます。

セーブ&ロード1表紙絵




今回はセーブ&ロードのできる宿屋さん ~カンスト転生者が宿屋で新人育成を始めたようです~の1巻の感想記事です。
タイトルが超長いので、以降2巻以降の感想記事も『セーブ&ロードのできる宿屋さん』と表記します。



まずこの小説、小説家になろう発の異世界転生系では珍しい三人称視点の小説です。


三人称視点と言いつつもその章に登場するメインキャラに寄り添う形の三人称視点の小説です。ですので一人称視点の小説が好みって方でもすんなり入り込めると思います。中々ふわーっとした距離感の三人称視点ですので、読んでみると分かり易いかと思います。

さて、タイトルのセーブ&ロードの部分ですが、読んで字の如くセーブとロードができる特異な魔法です。
そんな特異な魔法を持った主人公、アレクが経営する宿屋を舞台に様々な冒険者が訪れてー……ってスタイルの章毎に完結する形式の小説がこの作品です。

章毎に完結するといっても例えばこの1巻だと1章と2章は繋がっています。
厳密には2章の中で1章が絡んでくる感じですね。ですがメインキャラが1章と2章で異なるので、章の主役がサブキャラにバトンタッチする感じです。

セーブ&ロードですから死んでもロードした場所からやり直しが効きます。
これだけ聞くとなんだかRPGっぽいシナリオなのかな? って思うじゃないですか。
ところがどっこい、このセーブ&ロードを冒険者育成というギミックに上手く組み込まれています。アイデア賞というか脱帽ですね。

この小説の絵師さんは加藤いつわ先生です。
萌えーというよりも可愛いって単語が似合う絵柄だと思います。ぽわーっとほんわかしちゃうような、そんな感じですね。
そんな感じで主人公のアレクは常時笑顔なんですけど、それが余計に目立ってサイコパスの印象を抱かざるを得ません
別にサイコパスっていっても他人の気持ちが理解できないとかじゃなくて、倫理観が逸脱し過ぎてやることなすことエグすぎだろーって意味でのサイコパスですね。

セーブ&ロード、つまり死んでもやり直せるのです。
強敵と戦って戦死してしまってもやり直せます。ってことはデスルーラ的な使われ方をするのかなーって思うじゃないですか。
セーブ&ロードは冒険者育成のため、つまり修行のために使われます。
といっても死ぬ気で頑張るための保険とかではなく、文字通り死ぬために使われます。何言ってるの……って思われるかもしれませんが実際使われます。

ビックリしますよね。
最初の修行が飛び降り自殺して、死に対する概念からひっくり返すところから始まりますし。パラメータをアップするためにどうすればいいかって死ぬ気で頑張るんじゃなくて死んで無理矢理引き上げさせるー……ですもの。ちなみに飛び降り自殺は丈夫さ、つまり頑丈さを強化するためです。

舌を巻いたのはその次の修行でしたね。
確かに食べるとパラメータがアップするって設定の小説やゲームは色々ありますよ。でも強制的に修行の兼ね合いで死ぬまで食べ続けさせる作品は初めて見ました
食べ過ぎて死ぬって中々出てこないですよ……サイコメトラーEIJIの殺人シェフかよ(懐

常軌を逸した修行の数々でちゃんと強くなっていくのがまた凄い。
章の主役を張る冒険者(女の子)が逃げ出さずに最後……いや、最期までやり遂げるのもまた凄いです。ニコニコと笑顔で無茶苦茶なことを言ってくるアレクも凄いです。

特に1章のロゼッタがそうなんですけど、ロゼッタの台詞の数々と同じツッコミを読んでいるわたしは行いました。頭おかしいよこの主人公……。



そしてこの小説、三人称視点と書きましたが会話と地の文、双方のテンポがとても良くて読んでいくと本を止める時間を見失います読み易さとテンポの良さ、双方とても秀でている上でシナリオの展開も気になってしまうので止まらないのです。タイトルだけだと正直そこまで期待してなかったんですけど、これはもう凄いのです。



ただ、上記では書きませんでしたがある程度人を選ぶ作品だとも思います。

勧善懲悪のわかりやすい『悪を懲らしめる』シナリオ。
章のメインキャラが織り成す王道的な展開。
そして超チートで裏で暗躍する主人公(アレク)。

これら三つの歯車が密接に絡み合っていますが、いずれかひとつでも好みじゃない要素があれば、途端にこの小説は読んでいる人に合わないものになってしまうでしょうね。バランスのさじ加減が抜群に優れているということは、最初に合わなければずっと合わないことを意味してしますし。

太鼓判を持ってお勧めできる作品ですが、決して万人向けではないのです



1章も2章もとても面白かったです。
1章は導入として完璧な構成だと思います。分かり易くてアレクがどれくらい強いのか、そしてこの小説の世界観はどうなっているのか伝わりますし。

そして打って変わって第2章。
いやー2章の冒頭は凄いですね。だんだんと心境の変化が綴られているんですけど実質洗脳されてるじゃないですか……怖いわ。

冒頭のカラー挿絵でラーメンに悶えている一幕がありますが、一体どういう場面なんだと思ったら修行の一環だとは……でもこういうこと(修行)なのかー……面白いなぁって思うんですね。やってることが極悪非道ですけど(滝汗

そして表と並行して明かされる裏の事実ですよ。
ある程度予想できるとはいえ、こういう展開なのかー……と不思議な気持ちになりながら読み進めていきました。



アレク自身については語られた部分と語られていない部分があります。
特に家族の三人はまだ掘り下げが全然足りませんし、それらについては2巻以降で少しずつ触れられていくんだろうなーって予想します。



この小説、実は小説家になろうでは既に完結している作品です
ノベル版がなろう版とどれくらい、どのように異なるのか存じないのですが、最初から完結している作品ってなんか安心できる部分もあるんですよね。
巻がちゃんと発行され続ければ、作品に則ったエンディングが確約されているようなものですし。打ち切りエンドにならない限り、ちゃんとしたエンディングが保証されているのはとても大きいのです。

1巻がとても楽しめましたし、2巻以降も楽しく読んでいけそうです。
気になるのは1巻の1章2章のメインキャラは2巻以降も登場するのかなーって点です。
個人的に1章のロレッタはかなり好きなキャラなので出てきてくれれば嬉しいのですが……。
(おわり)