2019年、感想記事三つ目になります。
今回は当ブログだと扱うのが初めてになります、レジェンドノベルさんよりリリースされた作品となります。

DSD1表紙絵






今回はダンジョン・スクールデスゲームの1巻の感想記事です。
インターネットの巧妙な罠(?)なんですが、『・』があるか無いかで検索結果が大きく変わります。検索する際はキチンと『・』を入れるよう注意しませう。



小説家になろう発の異世界転移系……で良いんでしょうかね。
どっちかっていうと異世界というより異空間転移系のほうが合ってそうな気がします。学年、クラス単位で異世界に飛ばされてダンジョンを攻略するお話です。
小説家になろう版はタイトルが若干異なるので注意です。そのまま検索すると別の小説がヒットしますからね。




文体は比較的感情的にならないタイプです。
ダンジョンの戦闘関係が特にそうですね。
キャラとの会話の時は感情が乗り、地の文でツッコミを入れたりややコミカル寄りになることも。



ダンジョン・スクールデスゲーム1巻はとても親切な作品です。
1巻丸々使ってシステム、世界観の壮大なチュートリアルになっていますよね。
デスゲーム系なのに1冊の本を読み終えるまでの間に誰ひとりとして死亡者が出ないという、デスゲームってタイトルを冠しているのにそんなのアリかよ!? な展開です。
でもデスゲームと無縁なのかというとそうじゃなくて、1巻を使って導火線とガソリンをあっちこっちにばら撒いています。一度火が付くと大惨事まっしぐらな展開になることが容易に予想できます。ですのでこの作品は2巻からが本番ですね。2巻は2019年3月5日発売とのことなのでとても楽しみです。

親切な点は他にもあります。
これはわたしの主観になるんですが、普段RPGや異世界転移、異世界転生系をプレイしない、読まない人向けに最大限配慮された造りになっていると思いました。
特にデスゲーム部分に当たるシステムに触れるところはとても分かり易かったですし、読んでいくうちに浮かんでいく疑問も主人公の宮真大翔(みやまやまと)君が訊いたり考えたりしてくれるので面白いとは異なるんですけど世界観に納得できる構成になっています。



さて、ダンジョン探索系のデスゲームです。
『プレイヤー』である生徒たち一学年六クラスはダンジョンに飛ばされました。
教室の外はダンジョンと化しており、百層クリアしないといけません。一層クリアする毎にクラスに強制転移され、再び外に出ると次の層に進んでいる感じですね。

面白いのはダンジョンを攻略することが目的になりますが、資源(リソース)が限られている上に一層毎に早くクリアすればするほど、有利な特典が与えられることです。

どういうことかというと、ポイント争奪戦になります。
この作品に出てくるダンジョンはモンスターと戦いながらダンジョンを進んでいくことになりますが、モンスターは有限で無限に出現するわけではないです。
そして倒すことで経験値が手に入り、当然レベルアップします。レベルアップするとスキルポイントの割り振りやパラメータがパワーアップします。
つまりモンスターを倒さないと強くなれないですが、モンスターを避け続けても強化できません。そしてダンジョンを早くクリアするには戦力が求められます。避け続けたのでは一時的に何とかなっても長期的に見れば不利になります。

しかもダンジョン踏破で得られるポイントは戦力の強化ではなく、衣食住に密接に絡んできます。踏破が遅れれば遅れるほど不利になる上に次の層の攻略も不利になります。ジリ貧になるのです。
つまり有利な状況になれば有利でい続けられ易く、不利になればそのまま下り坂を転がっていくことになります。
とはいえ1巻の時点で相当不利なはずのクラスも隠し種があるようなので2巻以降、どのように展開されていくか楽しみですね。十中八九ポイントの争奪戦=殺し合いに発展することは間違いないでしょうし、ブラフミスリードトラップのオンパレードになっていくのだと思います。



面白いのかどうかは別にして、登場人物が生々しいなぁと思いました。
異世界に転移しました。ダンジョン踏破を強要されました。じゃあクラス一丸となってダンジョン攻略を頑張りましょう!! とはならないんですね。

大半の人はクラスに引きこもります。
そりゃそうでしょ……外がどうなっているのかわかんない異世界、しかもダンジョンのど真ん中で外に出れば訳わかんないモンスターが跋扈しているんですし。
他の人が適当に頑張ってくれるでしょって他力本願な人が多い上に割と理不尽なことを言ってくる、他人の意見に直ぐ乗っかる、何でもかんでも否定してくると、実際そういうことが起こったら起こり得る展開だと思いました。

ってことで各クラス人数そのものはそれなりにいるにも関わらず、実際にダンジョンを探索するのはそれらのうちの一握りになります。世辞辛いのです。



Wizardryシリーズが特にそうですけど、最序盤って怖いですよね。
死んでも確実に蘇生できるかわからない上に蘇生料金ガッポリ持っていかれるのでたった一度の死がパーティ壊滅に繋がります。

この小説は死んでも蘇生する手段は無いのです。クマ先生ボイスが語っています。
特別ポイントで蘇生がもしできるのであれば、説明があるはずなので、無いのです。

普通の一般ぴーぷるな学生の子供がですよ? いきなしダンジョンに放り出されていざ戦闘だーって言っても戦術もへったくれもないんですよね。
確かにスキルや魔法の概念が学生に与えられます。与えられるからといって精神面がいきなり順応するのかっていうとそうじゃないのです。

そんな手探り感満載でダンジョン探索が進んでいくのが面白いんですよね



マッピングもそうです。
迷子=死亡フラグなのは勿論のこと、元の教室に戻って休憩するには迷路からの帰還が必須になります。壁伝いに手を添えていけば良いって問題ではないのです。

つまり地図がとても重要になります。
ダンジョン探索系の作品ではマッピングを担当する人が同行するーってケースもありますよね。この作品の場合、ゲームで言うオートマップのスキルを持ったキャラが登場します。表紙絵でいう金髪の子ですね。わたしこの作品で一番推している子です。報われて欲しい……幸せになって欲しいって願っちゃいますね。

ダンジョン・スクールデスゲームってタイトルですけど、事実上ダンジョン・スクールカーストデスゲームになっていると思うんですね。クラス内の立ち位置がそのまま生存死亡フラグに密接に関わってきますし。
良い子もいれば悪い子もいます。
ってことは当然クラス内で上下関係が生まれます。
最下位に位置する者は顎で使われ、ダンジョンを探索する駒扱いになってしまいます。辛い。




クラス内の確執、クラス間の確執、双方じっくりとトラブルの火種が育っていきます。
特に後者。
スレ違いもあれば意図的に起こしているものもあって、特に1巻でほぼ出番が無かったクラスが2巻で暗躍する展開が目に見えている(牙が見えますし)ので2巻を読み始めたらいきなし血みどろの展開になっていたーってのもあり得そうで楽しみです。

ただこの小説褒めるばかりもアレなので不安な部分も書くと、一体全体何巻くらいで収拾付くんだろって思います
どうしてかっていうと1巻はクラス間のバトルが無い上で全百層のうちの二層しか進んでいないんですよね。単純計算すると全50巻……ってことになっちゃいます。

2巻以降はある程度はしょるかダンジョン探索の効率化が進むのだと思うんですが、クラス間の戦闘方面でどれだけ足の引っ張り合いになるかわからない以上、とても不安なのです。これは言い換えれば楽しみとも言えるんですけど、1巻だと一切無い部分なのでとても不透明で怖いのです。



システム方面の感想はこの辺にして、それでは何名かキャラの感想へ。



まず主人公の宮真大翔君ですが、自分のカードを中々切らないタイプの最強クラスになれるスキル持ちってことで面白いキャラ付けだと思います。
上で書いたとおりスクールカーストとの兼ね合いで不用意に手札を切ればボロ雑巾になるまで使い倒されるのが目に見えていますし、過去のお話の兼ね合いもあって中々ヒーローになれない、なりきれない苦労気質だと思います。

しかも大翔君が属している1組は委員長キャラで円滑にクラスをまとめてくれているの大弥秀(おおやしゅう)君がいます。
大弥君の内面がわからない以上、大弥君のさじ加減ひとつでクラスメイトが敵にも味方にもなります。ですので一見すると比較的平和そうな1組ですが、感情ひとつでドカンとなれてしまうのです。

一人称視点は三人称視点と大きく異なる良いところとして、情報を制約できるところにあると思います。つまり他の人の見た目はわかっても内面はその人から見た視点にならない限り絶対にわからないのです(心が読めるとかそういうのは除く)。
三人称視点はその辺取捨選択が取れるので描写される可能性は常にありますが、一人称視点にはそれがありません。だから見た目で判断できる部分はあくまで参考程度にしかならないのです。

少々脱線しました。
大翔君のオリジナルスキルはとても強いです。
しかし制約がとても厳しいです。なにせそれはパーティプレイを事実上禁ずるものですから。ただしスキルの全容がまだ明らかになっていませんし、どこまでが許されてどこまでが許されないか定かではないです。
さらにスキルの強化に伴って文面が増えそうですし、強さと脆さ、危険性を孕んだシナリオにスパイスを沿える大きな楽しみですね。

大翔君の過去回想で九重勇希(ここのえゆうき)の邂逅、そして現在での再会、同じ名前を持つ上にヤマトという同じ名前の友達がいる三枝勇希(さえぐさゆうき)との関係がどう深まっていくのか気になります。

同じ名前、漢字もですよ? 
メタ的に考えると何の意味も無く同じ名前にするはずが無いので、実は三枝勇希が元々フルネームが九重勇希で再婚離婚その他で苗字が三枝になり、九重勇希は元々違う苗字で再婚などで苗字が九重になったのかなーみたいに予想しています。
苗字が変わったというのは大翔君自身が、

 でも俺の名字が変わっていることもあり、あのヤマトだとは思われていないようだ。
(1巻、No.98-99より引用) 

ってありますからね。
ただ九重勇希の反応が薄かったとはいえ、ヤマトって名前そのものには反応したので同じ名前を持つ別のヤマト君もいるのだと思います。……ややこしくなりそう。



次に三枝勇希の感想。
表紙絵で左の金髪のツインテールの子ですね。
最初に登場した時不良そうな雰囲気ーみたいな感じで書かれていますが、いや可愛いでしょこの子!? な感じで推しキャラになりました。ファッション不良というか。

メタ視点で考えると表紙絵、大翔君の次に大きく描かれていますよね
身長って意味じゃなくて表紙絵を占める割合という意味で。
ってことは九重勇希よりも重要な立ち位置なのかなーって予想しています。

どっちかっていうと小動物系でしかもオートマッピングのスキル持ち。
マッピングはオリジナルスキル扱いではないのですが先生が他に同じスキルを持っている生徒はいないと宣言しています。
ただ先生の発言ってスレイヤーズで言うゼロスタイプなので嘘は言ってないけど本当のことも言っていないーって疑っちゃうんですよね……対抗戦の形式を則っている以上、先生がそれをするメリットってあんまり無いハズなんですが。

Wizardry系の3DダンジョンRPGをされたことがある方ならわかると思いますが、自分でマップを描きながら探索するのと勝手にマップがマッピングされていくのだと後者のほうがダントツに効率が上がります。わたしが好きなのは前者ですが時間は犠牲になっちゃいますね。

ダンジョンで迷わず効率性を求めるなら三枝勇希の価値は非常に高いと言えます。
さらに1巻の段階でポイントを払えば人物の購入(勧誘)が可能だと判明しましたので、三枝勇希がポイントを使って他クラスに採られる展開もあるんじゃないかなーって予想しています。

三枝勇希は元2組所属のスクールカースト組ですが、柊友愛(ひいらぎゆあ)の存在はとても大きいです。というかわざわざ高校まで追いかけていじめてくるって人生賭けていじめするバイタリティあるなら何でもかんでも手段選ばずに行って来そうですね……。

2組は対人戦を楽しみにしている羅刹修(らせつしゅう)がいますし、1組と2組のクラス間の血で血を争う抗争が発生しそうです。
なにせ2組は学年で最もヒエラルキーによる上下関係があるとありますし、ヒエラルキーの下位の者を特攻隊にしてあれこれ画策してきそうな気がします。というかするでしょ。モンスター、アイテムのリソースに限度がある以上、妨害工作とダンジョン攻略の二面攻略って絵になると思いますし。

心配なところは基本的に受け身であること。
会話は成立していますし勇気が無いわけでもないですが、基本的に受け身、後手後手なのです。ですので臨機応変さが求められる強襲展開になった場合に上手く立ち回れるのかって思っちゃいます。身体が慣れても心がついていかないーみたいな感じで。

なんにせよ、DSDの中で性格が一番好きですので、2巻以降も大活躍して欲しいなぁーって思います。



次に九重勇希。
何て言うんでしょうかね。縁の下の力持ちタイプで1巻であれだけ出番があったにも関わらず、そこまで印象に残ってないのです。
良く言えばシナリオを円滑に進めるためのサポーター、悪く言えば主張が乏しい無個性化しているキャラだと思います。
別に何もしていないわけではないんですけど、他のメンツが濃すぎて陰に隠れてしまっている……って言うんでしょうかね。アクティブに戦闘クラス会議その他で活躍しているにも関わらず、大翔君と三枝勇希が目立ち過ぎているのだと思います。
正統派系ヒロインが故の弱点ですね……最初は目立っているのに先に進めば先に進むほど、主張力を失っていくっていう。

気になるのは上でも書いたとおり、大翔君と過去に関係性が本当にあったのかどうか。そしてもうひとり居るであろう別のヤマト君の存在がどう絡んでくるか。

エピローグでこの『ゲーム』が過去にも行われたことが示唆されていますし、仮にループ系シナリオだとすると同じ名前うんぬんも別の意味を持ってきそうですし、そうじゃなくても名前を利用したシナリオ展開って割とどう転んでも面白いことになるので楽しみなのです。例えば名前で呼び合うようにしてもうひとりの同名キャラに指示を送っていたーみたいな。



次に此花彩花(このはなさいか)。
あざといです。いや別にボクッ娘が嫌いとかじゃなくて。
自分を全面的に推して来るキャラ嫌いじゃないです。
ただ打算で動いているだけに一度翻ってしまうとって考えると怖いですね。
かなり前向きなキャラだからこそ、いざって時に最効率を選びそう。
端的に言えば相手と今を天秤にかけて今に傾けば即断即決する感じで。
DSDの中だと特に個性が強烈なキャラですし、2巻の表紙絵飾るんじゃないかって予想
しています。

オリジナルスキル持ち。
ただし大翔君の一人称視点で進みますが内容が明かされていません。……明かされてないよね?(自信無いです)

組むことに価値がある、いくらでも使い道があると語られているのでダンジョン探索もしくは戦闘方面で有利に慣れるオリジナルスキルなのは確定ですね。
しかし此花彩花自身にとっては使うことがデメリットになると示唆されていますので、自分自身をコストに何かを行うスキルなんだと思います。よくあるのだと他の人のデバフやバステを自分に移し替えるーみたいなの。
2巻以降でオリジナルスキルが使われる場面が必ず出てくるだろう予想ができるので、活躍する場面が非常に楽しみです。



最後に5組。正確には扇原子猫(おうぎはらこねこ)について。
大翔君がハメられたーって憤慨してましたが、少なくともあの場面においてダンジョン攻略がボスモンスターの討伐ではなく、出口を見つけることだとはわからなかったのです。ですので別に5組の人は悪意を持ってあの展開になったのではないと思います。
なにせ自分たちの切り札を教えていますからね。

【経験共有】……恐ろしいスキルですよ。
大翔君の【一匹狼】と仕様が同じだと仮定すると、スキルのレベルアップによってさらなるパワーアップがあると予想できます。
ただでさえ経験値等倍の分配ってポケモンでいうと学習装置の超パワーアップ版ともいえる凄まじいチートスキルです。
つまり後になればなるほどどんどん有利になっていくスキルですし、クラス間の対人戦になれば真っ先に狙われると思います。無論、扇原子猫が【経験共有】を知っているって前提が必要になりますが……。



1巻の段階だと他人がどういうスキルを持っているのか知ることができるスキルがあるのかわかりません。
しかしスキルを自己申告で教え合っているのですから、1巻の段階で登場していたにも関わらず、自分のスキルを隠していた人物がいてもおかしくないと思います。

ですので腹の探り合いや頭脳戦は2巻以降になれば加速するだろうなぁと。

この小説は最初から最後までスクールカースト、ヒエラルキーが大きくピックされていますので、下位の者が上位に成り替わる、上位の者が下位に転落する展開も多数出てくるんじゃないかなーと思っています。じゃないとあれだけ上下関係、クラスのまとめ役が誰なのかって描写をふんだんに入れなくて良いと思いますし。



最後に書くのもアレですが、この小説の面白いところのひとつに統率性が取れていないので誰がどういう行動を採るのか予想できないところがあると思います。
RPGで理路整然としたパーティではないのです。軍隊や騎士団でも無いのです。
故に良くも悪くもリアルなんですよね。「さぁ頑張って攻略しよう」って前向きな人は殆どいないってのが良い味出しています。
その上で生きるためにはダンジョンを攻略しなければいけないっていう、常に切羽詰まった状況ですから死を天秤にかけてどういう行動を採るのかが面白いのです。
特に他クラスはクラス対抗の対人戦に燃える人が何人かいますし、1巻のように誰も退場しないで比較的平和に続くのに比べればそういう人と人の戦いになったほうが盛り上がりますし、殺伐としなかった分だけ2巻に対して期待が高まります。

2巻の発売日は3月5日。
レジェンドノベルさんの公式情報が正しいとするならば、同日電子書籍版も発売されるはずなので、当日に購入して即続きを読んでいきたいと思います。
(おわり)