amazon kindleの話になりますが、一部の書籍のページ全体移動の挙動が変わりました。
具体的にはタップすることで現れるページ移動の数字が、移動先のページの文字や画像が映るようになってきています。
ゴブリンスレイヤーも同様の挙動になる日が早ければ良いなぁと思います。

7巻表紙

今回はゴブリンスレイヤー7巻の感想記事になります。
いつもどおりネタバレ満載でお送りしますのでご注意ください。
前巻で相当やりすぎちゃったので、今回からまた控えめモードで感想をお送りします。
※努力目標



ゴブリンスレイヤー 7(GA文庫) 
著:蝸牛 くも先生
イラスト:神奈月 昇先生

ゴブリンスレイヤー7 (GA文庫)
蝸牛 くも
SBクリエイティブ
2018-03-16




6巻で少年魔術師との邂逅を経てゴブリンスレイヤーさんの心が少し前を向きました。
7巻は6巻からさらに1つの季節が過ぎたことで、ゴブリンスレイヤーさんの心がさらに柔らかくなったのを随所で感じることができました。

7巻の季節は夏。
2巻は初夏だったのに対し、7巻はうだるような暑さですので季節感はそこそこ違います。
冒険者稼業も熱中症との戦いになるのはリアルで良かったです。
現実世界だけでなく、四方世界の夏も大変ですね……。

さて、7巻は最後まで読むとシナリオの流れが少々複雑な構成になっているのがわかります。
冒頭の知識神の礼拝堂――文庫の戦いの布石は、最後まで読むとこう繋がって来るのかと。
大きなお話というコインの裏表だったんだと。

『何故』という疑問に対して答えが短く提示されます。
ゴブリンスレイヤーは今までもこれからもコインの裏表の裏なんだなぁとしみじみです。


今回は妖精弓手の故郷――森人の里とその周りがメインになります。
妖精弓手が結婚するって流れでしたので、終盤破談になるとかと思ったらベタに別の人の結婚式だったというオチが早い段階で提示されました。
読み手(わたし)の気持ちの向き方が定まり易くなっていて、物語の世界に没入できました。

5巻の雪山の麓の村の時と違い、森人の里は妖精弓手の故郷です。
一時的な『宿』ではなく、『拠点』として様々なエピソードで彩られています。

凄いのはこの森人の里のみならず、今回行く先々の風景情景に対する地の文の描写の圧。
コミカライズされると印象が変わるかと思いますが、地の文が凄いです。

これまでも十分凄かったですが、7巻は一歩抜きん出て緻密に描写されています。
その分会話パートと描写パートが綺麗に分けられているので、読んでいてしんどい気持ちにはなりませんでした。




7巻は恐らく物語全体のテーマとして、『価値観』が挙げられると思います。

ゴブリンスレイヤーさんの価値観。
女神官の価値観。
妖精弓手の価値観。
鉱人道士の価値観。
蜥蜴僧侶の価値観。
牛飼娘の価値観。
受付嬢の価値観。
輝ける兜の森人の価値観。
花冠の森姫の価値観。

それぞれの持つ価値観がぶつかり合い、溶け合います。
妖精弓手を花冠の森姫と比較することで、彼女がどう異端なのか鮮明に描かれていました。

さらにエルフとドワーフは仲が悪い、という設定は色んな作品に盛り込まれています。
この作品において、どの程度仲が悪いのか、に答えを得られたのが嬉しかったです。


ゴブリンスレイヤーさんは上でも書きましたが、6巻よりもやり取りが柔らかくなっています。
最低限の受け答え、確認に留まっていたのが、7巻は気遣う言葉選びが随所で行われており、1巻と比較すると変化の度合いの大きさに驚かされます。

この作品がエピローグ(最終巻)を迎える時、ゴブリンスレイヤーさんの人間性……だと少し変ですね。言葉選びがどれくらい変わるかホントに楽しみです。


そして忘れてはいけないのが女神官の価値観の変化。
進化……といっても差し支えないかと思います。
優しさはそのままに。思考がゴブリンスレイヤーさんに徐々に寄ってきました。

特に新たに得た奇跡(神官呪文)――《浄化》(ピュアファイ)の使い方は舌を巻きました。
っていうか絶句しちゃいましたね……3回目の使われ方は。
いや、浄化ですよ。浄化。要は「綺麗にしますよー」って呪文ですよ。
それが……ねぇ? 

1回目で模範的(?)な使い方。
2回目で「!?」ってなりました。
3回目――クライマックスは「そんなのありなの!?」な使い方ですよ。

これにはさすがの地母神もおかんむりでプッチンされます。
よくよく考えると2回目の時点で既に反則なのでは? って思うんですけど、2回目と3回目何が違っていたのかっていうと、

> ──不浄だ。
(7巻、位置No.3882より引用) 

とあるように、直接的に描かれて無いですけど、明確な殺意を読み取れます。
即ち、慈愛と希望、癒しを与えるべき神官職が殺意という暴力性に心を染めて奇跡を唱えてしまったことにより、地母神は激おこになっちゃった……んでしょうね。

じゃないと、例えば1巻で《聖壁》(プロテクション)でゴブリンを閉じ込めたり、ゴブリンロードとの戦いの《聖壁》2枚挟みで既に激おこ判定を喰らっていてもおかしくないのです。
地母神をGMと見立てると、さすがに看過できない行為だった……ということなんでしょうね。

6巻で指揮官(リーダー)を一時的に行いました。
直接の攻撃でなくても、攻撃の号令、指令で頼りになる兆候は表れています。
いやー化けるでしょ。女神官。絶対。




7巻はゴブリンの暗躍も凄いです。
前巻、6巻は凄惨を極めましたが7巻は軽くそれを越えていったと思います。
序盤の文庫の戦いの時の暴力描写は軽いジャブ。

中後半に描かれるゴブリンや冒険者(青の認識票とあるので第七位、青玉等級かと思われます)に対する陰惨な仕打ち、拷問は思わず苦虫を潰したような気持ちになります。

百舌鳥の速贄――串刺し刑はこの小説の今までを振り返ると、ありそうであまり無かったです。
過去の巻で見かけたのは、括られていた、刺されたに留まっていましたし。
どうして見かけなかったのかの答えも提示されているので、あぁ……そういうことなのか、と。

串刺しそのものはベタというと変ですが、比較的他の作品でもちょくちょく見かけます。
しかしその先……腐乱描写が含まれてくるとなると話は変わってきます。
アニメになった場合、全部白骨化させるかなりしないと相当きついものがあると思います。
『臼』もそうですが、今回全体的に光と影が両極端ですね。

森人の里とギルドを除くと全面的にゴブリン、ゴブリン、ゴブリンな7巻。
3、4巻とゴブリンの暗躍成分が低かったからか5巻以降ブーストが掛かっています。
7巻は、というと、

文庫での戦い
大河での戦い
森人の里の近くでの戦い
そして古代遺跡での戦い

と実にボリューミィで5巻と同等かそれ以上にバトルパートに尺が設けられています。
ただ単に戦うのではなく、地の利や武器、術、戦略を用いてくるので単調さはありません。
しかも今回は要するにUMAに乗るゴブリンまで出てくるので、ゴブリンひとつでここまでレパートリィが広くなるのか……と無限大の可能性を感じました。




それではココからは特に印象に残ったシーンをいくつかピックアップします。
性質上、上記と内容が重なる箇所がいくつかあります。

まず真っ先に浮かぶのは、やはり《浄化》(ピュアファイ)の使い方です。
《聖壁》(プロテクション)を敵を閉じ込めるために使ったり。
《聖光》(ホーリーライト)を疑似餌として使ったり。
今まで奇跡は創意工夫で攻撃補助呪文に早変わりしてきました。

《浄化》を効果を正しく読み取るためにTRPGのデータを読みました。
《浄化》は射程60メートル以内の中心点から伸びる一定範囲の不純物を取り除きます。
不純物が液体の場合、真水に変換されます。
術者の魔力が強ければ強いほど、影響を受ける範囲が増えます。

奇跡は神官が唱える呪文です。
ところで四方世界は女神官が仕えている地母神だけでなく、戦女神、至高神、交易神、知識神の全五神がいます。
同じ奇跡であっても、何の神から力を借りるかで詠唱部分が全く異なります。
例えば《浄化》は地母神から力を借りる場合、

> いと慈悲深き地母神よ、どうかその御手で我らの穢れをお清めください

とありますが、交易神の場合、

> 巡り巡りて風なる我らが神、我らの旅路に快き雨と、その倍の日差しを

と効力がどのようなものか分かり易くなっています。
TRPGのデータ集を見れば、今まで登場した奇跡がどの神の力を借りて行うかの詠唱部分を比較することで、新たな発見を見つけることができるかもしれません。
ちなみに2巻で受付嬢が唱えていた、《看破》(センス・ライ)も奇跡のひとつです。

ゴブリンスレイヤー TRPG (GA文庫)
川人忠明とグループSNE
SBクリエイティブ
2019-05-14



脱線しました。
《浄化》の作用は、1回目は身体に付着した汚れを不純物として見立てられました。

問題は2回目から。
何をもって不純物とするか。
汚れている――からあの見立て。それもかなりの広範囲です。
TRPGのデータから察するに、女神官の魔力は相当なものだと思われます。

ところでゴブリンスレイヤー1巻において、最初から女神官は奇跡の使用回数が3回でした。
Wizardry的に見るとレベル1から呪文の使用回数が3回って相当凄いことです。
全部魔力関連、奇跡の習得方面にパラメータを割り振った結果、と見るのがベターでしょう。

と調べていた時、次のような記事が見つかりました。

原作者・蝸牛くも氏のGMでお届けする「ゴブリンスレイヤーTRPG」先行リプレイ。マフィア梶田ら,歴戦の冒険者達がダンジョンに挑む

記事の中で女神官の画像の下に、小さく次のような文章が添えられています。

>ちなみに原作(あるいはアニメ)に登場する女神官ちゃんは,初登場時点ですでにレベル3神官とのこと。あれでかなり優秀なエリートなのだ

女神官。実は性格が戦闘に不向きなだけで超エリートじゃないですか……。
女格闘家も女魔法使いもポテンシャルはありましたし、最初から無謀なことをしなければ、もっと別の、4人による輝かしい未来があったのかもしれないですね……。

……と女神官の優秀さがよくわかりました。
それだけに3回目の効力が『中途半端』な結果に終わったのは、TRPG的に見るならば、それだけダイスの出目が渋かった、ということなんでしょうね。
もっとも、直ぐ様に地母神がプッチンしていますし効力が自ずと抑えられていたのかもです。

名前とは裏腹に《浄化》のポテンシャルは無茶苦茶高いので、今後も出番が多そうです。
なんだろ……パッと浮かんだのが、電気攻撃を真水(絶縁体)で防御するーみたいな?
(街刃ってむかしのマガジン漫画で使われた、真水を血で通電させるの逆の理論ですね)




次にモケール・ムベンベ(川を堰き止めるもの)。
カラー挿絵も相まって、読んでいる最中は「あぁ、とうとう恐竜が出てきてしまった」と思いながら読んでいました。
いざこの感想記事を書くにあたって調べてみると、モケール・ムベンベって熱帯雨林に生息しているとされるUMAの一種なんですね。

作中、妖精弓手がゾウを引き合いに出していましたけど、なるほど記事を読むとゾウが例えとして出てくるのを納得しました。

モケーレ・ムベンベ (Mokele-mbembe) のwikipedia記事

よくよく考えると昨今のような情報社会ならいざ知らず、識字率にばらつきがあるとされる世界に本を読むという習慣がどの程度あるのか怪しいです。
怪物辞典(モンスターマニュアル)に目を通している人はどれくらいいるんだろって考えると、ゴブリン特化型のゴブリンスレイヤーさんがゾウを知らなかったのは無理も無いです。

ちなみにこの四方世界では受付嬢が言っていましたが、怪物辞典にはエレファントで登録されているようです。


ゴブリンスレイヤーTRPGにはエレファントではなく、象と書いて『じゅう』と読ませるモンスターのデータが記載されています。
象の鼻の長さは射程距離と移動距離にプラス修正されるという支援効果で再現されています。
さらにリアルの象と同じく、大声で鳴く行為は雄叫びとして再現されています。


ゾウに対し、純粋に興味を持ったように尋ねるゴブリンスレイヤーさん。
7巻でゴブリンスレイヤーさんは興味や疑問に思ったことを直ぐに尋ねる場面が多いです。
総じて見ると『外』に目を向けたアクションが多いですね

モケール・ムベンベとの戦いにおいて、ゴブリンスレイヤーさんは新たに得た知識をすぐさま元々持っていた知識と組み合わせることで即興で対応策を閃きました。

今回は殺してはいけない、という条件バトルになったのが面白さに拍車をかけています。
ここでもゴブリンが暗躍していて、少し手前の大河での戦いもそうですが、ライダーなゴブリンが多くてなんだか作為的(黒幕がいる的)なものを感じました。

この予想は正しかったのですが、この予想に対する答えの提示の仕方はパズルが埋まっていくようで非常に面白かったです。冒頭の文庫の戦いがこういう影響を与えてくるのかー……と。




次に牛飼娘について。

1巻で牛飼娘の牧場をゴブリンロードたちが強襲しましたが、ゴブリンスレイヤーさん他冒険者たちが見事に防衛し、ゴブリンたちを殲滅しました。

ここで重要なのがゴブリンスレイヤーさんはゴブリンロードを抹殺するためにひとり森の中に足を踏み入れた――つまり牛飼娘は直接ゴブリンスレイヤーさんが戦っているところを見たわけではない、ということです。

1巻から通してみると、7巻でようやく初めて、牛飼娘はゴブリンスレイヤーさんがどのように戦っているのか見ることができた――叶ったと言い換えても良いでしょう。

牛飼娘は今回、妖精弓手の友人として森人の里に行きましたが、別の意味でもとても貴重な体験ができたのです。ゴブリンスレイヤーさんにとって一番近い場所にいる牛飼娘ですが、今回で距離感がグッと縮まったのではないでしょうか。

そして忘れていたんですが、牛飼娘ってただの守られるヒロインってわけじゃないんですよね。
筋力あるのを忘れてました。伊達に牧場の娘やってますね……。




次に妖精弓手、そして7巻で登場した他の森人(エルフ)。そして森人の里について。

バトルのメインが古代遺跡と見立てるならば、舞台のメインが森人の里です。
今まで妖精弓手以外の森人が全く登場しなかったのかというと、実はそんなことはありません。
しかし物語の性質上、登場するのはゴブリンに襲われて亡くなった森人だらけです。

さて、妖精弓手は2000歳とパーティの中で最高齢ですが、森人として見ればまだまだ若輩者。
というかこの四方世界の森人はただ単に不老長寿なのではなく、病気やケガで死なない限り寿命による死亡がなく、事実上の不老不死。
アンデッドよりもよっぽど生命の在り方から逸脱しています。

そして死なないということは変わらないということでもあります。
いつでも手に入る物はいつまでも手に入れようとしない物であるように。

森人の価値観は新たなものを取り入れても根本的に変化する、という概念は希薄なようです。
頑固、と言っても良いでしょう。

妖精弓手の姉、花冠の森姫と比較すればいかに変化に乏しいのかは顕著に描かれています。
よく言えば伝統を深く重んじているとも言えます。

先に登場した輝ける兜の森人のほうが模範的な森人だと思っただけに、輝ける兜の森人が実は比較的柔軟に考えていたんですね……。

そして数千歳だから時間の感じ方は当然のんびりしているのですが、だからといって1日1日の感じ方が薄いのかと言えば、そうではなかったです。
長き時を歩めど、1日1日を踏みしめていたので、何というかエルフのイメージ変わっちゃいますね……。


7巻の舞台は夏。
そして森人の里に行くには熱帯林と大河を突破しなければいけません。
ということは、森人の里と周辺は赤道のように夏以外のあまり無いのかな? と思いました。
今まで色んな場所に妖精弓手は冒険しましたけど、基本的に服装変わっていないんですよね。
5巻、雪山の時も上からさらに羽織っていましたけど、ベースは変わらなかったですし。

しかし、

>「わしとしちゃァ、そんな薄手の服着てて良く平気だと思うわ」
>「あら、森人は意外と頑丈なのよ?」
(5巻、位置No.160-161より引用)

とあるので、単に寒さに強いだけ……かも?

森人の里に冬が訪れるって想像し難いんですよね。
冬が訪れ、葉が枯れ、自然が形作った枯れ木と化す森人の里ってなんだか嫌すぎますし。
でも周りに動植物が生きていますし、動植物に対して円環の概念を持ちだしている以上、周りで動物が冬眠するーってありそうな……どうなんでしょ。


舞台となる森人の里ですが、自然が造り出した巨大都市ってことでアニメになると非常に見応えが凄そうでとっても見たいなぁって思いました。
兎にも角にも地の文の圧倒的情景描写が凄いんですよ

> 密林の中にぽっかりと開いたそれは、地下から天へ広がる大空洞──いや。
> はたしてそれは森の形をした街なのか、あるいは街の形をした森と呼ぶべきなのか。
> どこまで高く深いのかわからぬ吹き抜けに、大きく張り出した樹の洞が転じた家々。
> それを繫ぐは枝葉と蔦とが絡み合って作られた空中通路群。
> 宙を舞うように路行くのは、洗練された衣装を纏った美しき森人たち。
> 樹木の表皮に浮かび上がった微細な紋様が全てを彩り、葉擦れの音は壮麗な楽曲となる。
> 幾重幾重にも積層され、天地を貫くこの街は、まさしく摩天楼だ。
(7巻、位置No.1609-1616より引用)
 
ほんの表層、一部分だけでこの描写力ですよ。
森人の里に至るまでの大河もそうですが、今回情景描写に対する力の入れようが凄まじくて、これだけで7巻を買って良かった……と恍惚な気持ちになりました。


森人の持つ文化。
森人の持つ価値観。
文化は建築や技術だけではありません。食文化もあります。
……タピオカだけは予想できませんでしたよ。西米と書いてタピオカと読むとは……。
というかタピオカドリンクって実は見た目は知ってても中身を良く知らなかったのですが、こういうものだったのですね。

タピオカの記事

森人が動物の肉を食さない理由と虫を食べる理由は腑に落ちました。
不老長寿、事実上数が増えていくのに対し、動物のサイクルを鑑みればこうなるのは道理と言えます。同時に動物と違い、虫の増殖率を鑑みれば虫を好んで食べていったのも頷けました。


森人の結婚式。
それもお姫様と王様の結婚式です。
よくよく考えるとゴブリンスレイヤーって陰惨な結果はあれど、明るいお話ってあんまし無いんですよね。

「事件が解決しました。めでたし、めでたし」
というのは言い換えれば事件が起こる前に幾分戻る、と見立てられます。
純粋に明るい終わり方になった、というのはあんまし無いのです。
解決したからハッピーエンドなのではなく、事件に関係なくハッピーエンドになれたのですから7巻のラストは非常に貴重です。

それも妖精弓手がドレスを纏っていますからね……野伏の正装と外套以外だと貴重ですよ。
7巻はこれだけでなく、水着で水浴びするシーンもありました。
冒険、戦闘だけでなく、こういう……何て言うんでしょう。サービスシーンって言うとちょっと違う気がするんですが、こう艶やかなシーンってあんまし無いのでグッと来ました。




最後に7巻の中後半を彩る古代遺跡について。
《浄化》(ピュアファイ)関連は上で散々書いたので省略します。

特に印象に残ったことは3点あります。


まずダンジョンの構造に螺旋階段が用いられていたことです。
1巻でオーガと戦った古代遺跡を想起しました。
2つの古代遺跡は同じ年代(数百年の幅があるでしょうが)に造られたのかなーと思いました。


次に昇降機の存在です。
Wizardry系の3DダンジョンRPGだとお約束のように出てくる便利な移動手段です。
要するにエレベーターですね。
どちらかというと工場にあるゆっくり上昇下降するものが近いかと思います。

今回のダンジョンはギミックがいくつかあったり……。
広大な広さで電撃作戦ができなかったり……。
と凝った構造をしまくってます。

それに加えて大量のゴブリンによる人海戦術。数の暴力。
3人の呪文遣いのリソースがどんどん減っていき、一時は回復できたのにそれを嘲笑うかのように押し寄せる数の暴力。
火力の乏しい各個撃破に向いたパーティなだけに、どうやってゴブリンを殲滅するんだろとワクワクしながら読んでいきました。

結局オチだけを見ると、今までの展開から想像できる範囲で面白く、そしてえげつないやり方だったので、あぁゴブリンスレイヤーを読んでいるんだって気持ちに浸れました。


3点目はコインの表に当たる部分です。
この辺2巻を踏まえると、今後も色々含んできそうだな、と思わざるを得ません。
文庫で見つかった読めない石板。
石板を解読し、剣の乙女はゴブリンスレイヤーさんに手紙を出したのかと思ったんですよ。
まさか手紙の相手が……だったとは。
それも2巻よりも7巻のほうが『先』がヤバかったですし。

結果的に見れば、2巻のゴブリンスレイヤーさんの行動は極めて正しかったんですね。
7巻のように、封印が破れる可能性を根っこから潰すことができたのですから……。




以上、7巻の感想でした。
色々端折ってますが書きたいことは概ね書けたと思います。
6巻が内面にスポットライトを当てたのに対して、7巻は何もかもが面白くてえぐくて最高でした。

次回は8巻。
あとがきで王都に向かい、深き迷宮に行くとあります。
どんなスペクタクルなドラマが展開されるか非常に楽しみです。