今回はゴブリンスレイヤー10巻の感想記事です。
いつも通りですがネタバレだらけですのでお読みの際はご注意ください。

GS10

ゴブリンスレイヤー 10(GA文庫) 
著:蝸牛 くも先生
イラスト:神奈月 昇先生
ゴブリンスレイヤー10 (GA文庫)
蝸牛 くも
SBクリエイティブ
2019-03-14




10巻はシティーアドベンチャーをベースに様々な人々の生き様が描かれています。
つまり群像劇ですね。ゴブリンスレイヤーさん以外のキャラがメインのパートも多いです。

そういう意味で10巻はゴブリンスレイヤーさんが活躍しまくるお話ではないです。
しかし今後の展開を鑑みると、新たなパイプを作ったということでとても重要なお話だと思います。

当初はてっきり、葡萄尼僧のいわれなき差別問題を取り扱う重いお話になるかと思いました。
しかし葡萄尼僧が明るい姉御肌で暗さを見せず、お話の方向性そのものが大きく変わっていくので中盤以降面白さが加速をつけていった感じです。

とても面白いと思った反面、コミカライズは良いとして、アニメ化できるのかなと思いました。
葡萄尼僧は褐色の女性ですし、こういうのって炎上しそうで怖いんですよね。
人権や差別問題ってとってもデリケートですし……。



えっと、軽くお話(展開)を振り返ってみます

プロローグ
依頼(ゴブリン退治)
噂が生まれる
どうすれば噂を根絶できるか考える
噂の出所を調べる
それぞれの戦い
エピローグ

ざっくりにしていますがこんな感じかなと思います。
今までのお話と大きく異なるのは、ゴブリンスレイヤーさんが自分に何ができるのかを考えて、自分にできないことを他の人に頼む、という展開です。
これはゴブリンスレイヤーさんがゴブリン狩りに特化している反面、それ以外は不向きの一点突破型であることを改めて描写しています。

つまり自分にできないことはそれが得意な人に頼んじゃえば良い、という役割分担の重要性を強く表しています。

終盤の戦いはゴブリンスレイヤーさんたちとそれ以外の冒険者で大きく二分した展開になっていますが、ゴブリン勢とその他混沌の勢力に敵のタイプも二分されています。
ゴブリン以外と戦う展開もあれど、ゴブリンスレイヤーさんが戦うのは基本的にゴブリンなんだ、という今後の未来も見せている展開になっているように感じました。




それじゃあ10巻で思ったことを箇条書きにして書いていきます。



葡萄尼僧

褐色姉御肌の人ってことで脳内イメージが鉄血のオルフェンズのアミダさんで固まりました。
よって脳内イメージCV田中敦子さんです。

10巻は葡萄尼僧にまとわりつく噂のせいで特に前半は暗いお話です。
しかしそんなものをもろともしない明るさと優しさと頼もしさで清涼剤のように感じました。
これで噂で影を帯びる描写が多かったら読後感がとてもよろしくなかったかもしれません。

女神官の先輩ということで、嗚呼この人の後輩なんだ、と感じさせる説得性が良かったです。
なんていうんでしょうかね……道標というか。
中盤、女神官に対し、地母神の教えを説く場面は眩しかったですね。

冒頭が冒頭なだけに10巻全体で大きく関わって来る、いわゆるゲストキャラポジションだと思ったら意外と出番少なかったです。
ただ出てくる場面場面が女神官にとって重要性が高いものが大半でしたので、とても印象に残るキャラになりました。

今まで出てこなかったのも鑑みると次回登場はずっと先……なんでしょうね。
もしくはお祭り(秋に該当)になるだろう12巻か。



妖術師、僧侶(武僧)、斧戦士

名前を見た瞬間にわかりました。
2巻で圃人斥候と共に等級審査を受けていた残りの3人ですよね。
再登場したのが嬉しかったのと同時に第六位、翠玉等級にクラスアップしてて良かった良かったと思いました。何度も鋼鉄等級から昇級できないって描写ありましたものね……。

ちなみにその時の審査で第七位、青玉等級にクラスアップに成功したようです。
そのあとの1年と3つの季節のどこかで第六位、翠玉等級にクラスアップしたってことですね。


さてそんな3人ですが、2巻では圃人斥候の割を食ってしまった感じで出番が無かったのですが、10巻は大きく個性が描かれています。

斧戦士は荒々しい上に血が上り易く、
武僧は金銭面も術の使用回数も節約志向で、
妖術師は神経質なのがわかりました。妖術師のお姉ちゃんキレ芸とても良かったです。
でもこの展開なら妖術師が神経質になったりキレるのは仕方ないとも思います。

結局この3人の出番は少ないんですが、その少ない中で3人ともそれぞれ濃い活躍(行動とセリフ)で葡萄尼僧の次にレギュラーメンバー以外で印象に残りました。
この3人ってノベル版とコミカライズ版は既に登場していますし……。
(※アニメ版だと圃人斥候は登場していますがこの3人は登場せず省かれています)

今後もこの3人は出てきて欲しいなって思いました。
この作品だと初めてじゃないでしょうかね……生きて登場した中堅冒険者って。



女神官

ゴブリンスレイヤーさん思い悩んでいるんですが、それ以上に思い悩んでいるのが女神官です。
特に何でもかんでも背負う気概だっただけに、今回歯がゆい気持ちというか、無力感に苛まれています。今まで以上に感情寄りな描写が多かったですね。

『善』の心を持っているからこそ、裏路地の一件を女神官が理解するのは難しいんじゃないかなーと思いました。この辺、『中庸』のゴブリンスレイヤーさんと対比になっています。

仮にこのまま理解しきってしまうと、アライメントが『善』から『中庸』寄りになるかもです。
なので理解できない、ただそういうのもある、に留めるスタンスであって欲しいです。

……なんだろ。
10巻は女神官の出番は多かったんですけど、目立った活躍って今までに比べると控えめです。
例えばゴブリンゾンビらとの戦いで、てっきり9巻のように《小癒》を使うと思ったら使わなかった(というより単独対象なのでこれだと燃費が悪いですね)ですし。
奇跡の使用回数が限られているからこそ、大一番の時にしか活躍できないのが悪い方面で目立ったように感じました。

ただ終盤のタワーディフェンス的な戦闘場面はルートを制限するという意味で文句なしにタワーディフェンス的な大活躍をしたので、終盤で取り返した感じ……でしょうかね。

10巻のお話は女神官の心に、大きな影響を残したと思います。
特に葡萄尼僧の助言(地母神の教え)はこれからも女神官の心の規範になっていくでしょう。



ローグギルド影の中の仕掛人。そして真相

話がちょっと飛びますが、この記事を書いている時点で既にゴブリンスレイヤー第12巻が発売されています。物理書籍のほうの限定版はドラマCDが付いているのですが、アニメ版のキャストから加えて数名の新キャラ明記&声優さんが増えています。

白兎猟兵:七瀬彩夏
密偵:畠中祐
赤毛の森人:楠木ともり

白兎猟兵は9巻で仲間に加わった兎人(実は女の子)なのでわかります。

……下2人 is 誰? ってなりました。

畠中祐さんといえば遊戯王ZEXALで主人公の九十九遊馬を演じていた人ですね。
ちなみにジョジョの奇妙な冒険第四部、ダイヤモンドは砕けないにも出演されていて、吉良吉影のキラークィーンで爆破されたカップルの人(眼鏡を掛けていたほう)です。

楠木ともりさんはSAOAGGOで主人公のレンを演じていた人ですね。
ラブライブシリーズは詳しくないのですが、優木せつ菜を演じてらっしゃるのでこっちでご存知の方が結構多そうだと思いました。
あと遊戯王シリーズの新作、遊戯王セブンスで恐らくヒロインポジに該当する霧島ロミンも演じられています。

大物じゃん!? 
誰だよ!? 
今までどこにそんな人(キャラ)いたっけ!? 

と混乱しました。
声優さんが有名な方だとそれだけ重要なポジだと思っちゃいますし。
名前から察するに、王都の王様の陰で活躍する人なのかなーと思ったのですけど、それらしき人が見当たりません。
実は10巻で赤毛の森人も含めたこの2人が新登場します。

ちなみにわたしは12巻は電子書籍版を買いました。
スマホで読める、という利便性に比重置きますし……ドラマCDだけお安く手に入らないかしら。


脱線しました。
今回10巻は光のギルドを冒険者たちが集う斡旋所だと見立てると、闇のギルドは冒険者の等級を持たないならず者の集まり、即ちローグギルドだと見立てられます。

要するに斡旋所はクエストを冒険者に斡旋するということは、貼られている依頼をこなしていけばとりあえず何かお仕事ができるのです。達成できるか、生存できるかはは別にして。
つまり自分でクエストを探しに行かなくて済むんですね。

ここで重要なのが冒険者の等級認証。
等級認証があるからクエストの難易度やクエストの依頼主から冒険者の安心度がわかるシステムなんですね。

打って変わってローグギルドは冒険者の等級認証が意味を成しません。
いわゆる裏稼業ですから実力第一ですが裏で頼む=それ相応に非合法な依頼ってことになります。
つまり斡旋所以上に実力第一、実力主義なのだとわかります。危険度もダンチなのです。

というかローグギルドから依頼される《影の中の仕掛人》。
ルビが『シャドウ・ランナー』ですけど、これモロにTRPGのシャドウランですよね
名前は聞いたことがあるTRPGですけど、どんだけ古今東西RPG、TRPG網羅していくんですか……。

10巻作中のワード、パラノイアも偏執病のことであると同時にTRPGでパラノイアありますし。
わたしの好きな迷宮キングダムも実は既に何らかの形で登場しているんでしょうかね。

パロネタなのかどうなのか割と判断に困る大多数が実はパロネタ、元ネタありますよーってなってきているんですよね。いただいたコメントを拝見する限り……。


そんなローグギルド。
ゴブリンスレイヤーさんが訪れたのは知識として知っているだけじゃなくて、お師匠さんが関わってくるのは意外でした。
いや、御師匠さん忍びの者だからイリーガルなところも存じていてもおかしくないんですよね。

そしてゴブリンスレイヤーさんにそれ(作法と礼儀)を伝授しています。
お師匠さん厳しい人なのは間違いないですけど、同時にゴブリンスレイヤーさんが活動できるように表から裏まで色々叩き込んでくれたんですね……。
優しい、ですよね。言動が悪いだけで。


さて、そんなこんなでゴブリンスレイヤーさんから依頼を受けた密偵と赤毛の森人。
この手のだと依頼人が実は悪い人で、依頼された側が依頼人を懲らしめるーなんてヒロイックな展開が創作だとちょくちょくあります。
しかし依頼人の正体や目的を知ってしまうと、依頼人にとって邪魔な存在と化してしまいます。

即ち、知らなくて良いことを知ってしまうのは消されてしまう道理なのです。
だから依頼された側は依頼主のことを知らない(ようにする)のも道理です。

これでゴブリンスレイヤーさんを批判している密偵が、知らず知らずのうちにゴブリンスレイヤーさんから依頼を受けて暗躍している構図になっているのが実に面白いです。
そしてゴブリンスレイヤーさんが何を依頼したのか辺りから10巻は一気に面白くなりました。


中盤くらいまで読むと、葡萄尼僧の噂を流している者の正体がわからなくても、酒商人が物凄く怪しいのは読んでいて思ったんですよね。
牛飼娘の牧場を買収しようとする時点で何か裏がありそうってなりますし。

そうなるとお酒造りと葡萄尼僧のところで造る御神酒の点が繋がって、葡萄尼僧が邪魔というより葡萄尼僧の存在で葡萄酒を失墜させる狙いがあるのも予想ができます。

となると、そこまでリスクを冒す必要性はあるのか? ってなるんですね。
それこそローグギルドに依頼して手を打っちゃえば良かったんじゃっていう。
この疑問の答えは密偵と赤毛の森人が潜り込んだことで得られました。
なんでこの場にこんなのがいるんだ!? っていう。

真相がわかるにつれて、予想よりもスケールがどんどん上がってきました。
ただの土地買収シェアの強奪に留まらず、真相が明らかになった時は「嘘でしょ!?」と思わず呟いちゃいました。

思えばゴブリンスレイヤーって1巻1巻で綺麗に解決できるようになっています。
そして無駄な戦闘って無いんですよね。
一件無意味そうな戦闘にも後に繋がる伏線だったーってわかるわけです。

今回10巻も例に漏れず、前半のゴブリンゾンビらとの戦闘も大きな伏線だったのです。

そして10巻はとても大きなスケールの話になりました。
規模だけでいくなら1巻よりも大きな話になってしまってビックリしました。
そして冒険者は依頼(クエスト)に集うの如く、総力戦で面白かったです。

あとゴブリンスレイヤーさんは思い悩みながら葡萄尼僧の誹謗中傷の件を解決しようと奔走していましたが、結局誹謗中傷を行った黒幕はゴブリンスレイヤーさんが手を下さなかった(下せなかった)というのは、何ともこの作品らしい顛末だなと思いました。



ゴブリンスレイヤーさん

自分に何ができ、何ができない。やる、やらないはこの作品の命題のひとつだと思います。

今までは戦闘方面において随所でそれが描写されていました。
故にソロプレイではなく、パーティプレイのほうができることの幅が広がる、という方向でゴブリンスレイヤーさんは実感していました。

今回10巻は戦闘以外において、自分に何ができるのか、何ができないのかで思い悩んでます。
口数こそ少ないですけど、悩んでるの無茶苦茶伝わってくるんですよね……。
そして戦闘と同様に、できないことはできる人に任せれば良い、という成長を遂げています。

自分にできることとは、即ちゴブリンをスレイすること。
だからゴブリンスレイヤーさんはゴブリンスレイヤーであり続けても、冒険者になることはできないのです。否、冒険者になれても、それは周りの助力があってこそです。

ゴブリンスレイヤーさんの目的がゴブリンをスレイし続けることなのですから、冒険は冒険が得意な者――冒険者に任せれば良いのです。
しかしゴブリンをスレイするのも見方を変えれば冒険なのですから、ゴブリンスレイヤーさんも立派な冒険者なんですよね。

詰まるところゴブリンスレイヤーさんが行っているのは、得た知識を使うこと。
そして過去の知識を活用することです。
故にお師匠さんから叩き込まれた数々の智慧が今のゴブリンスレイヤーさんを助け続けてくれているんですよね。今回のローグギルドとのパイプもそうです。

遊びが無い。
真剣である。
ギブアンドテイクを理解している。
からかわれることがあっても、嫌われにくいことでもあります。
裏の世界の住人から見ても、ゴブリンスレイヤーさんの愚直さには打ちのめされる他無いですね。


あと今回10巻は仲間を信頼しているからこそ少々無茶な動きをする描写が目立ったと思いました。
特に終盤の戦いは顕著に出ていたと思います。
ソロパーティでこの立ち回りはいくらなんでも命捨ててるでしょって思っちゃいますし……。
背中を預けられるからこそできる行動というか……。



白兎猟兵

結局山を降りて新米剣士と見習い聖女と手を組んで3人パーティになったんですね。
ゴブリンスレイヤーさんの世界観では珍しい、女性オンリーではない女性比率のほうが高いパーティになりました。
しかも前衛1、後衛2で後衛が遠距離攻撃とヒーラーですから生存率は一気に上がったと思います。

言葉に飾りが無く、真っすぐで穏やかで素直なので凄く好感が抱けます。
新米剣士と見習い聖女が事実上のボケツッコミコンビになっているので、穏やかな精神がふたりにとっての良いカンフル剤になってくれるでしょう。



タワーディフェンス

籠城戦か迎撃戦をすると思ったら割とガチ寄りのタワーディフェンスでビックリしました。
自分で殴りに行ったのも含めるとOrcs Must Die!寄りだったんじゃないかなーと。
誘導遠距離攻撃別口からの侵略etc...タワーディフェンスの面白さが溢れていました。



新登場したゴブリン

ゴブリンゾンビはゴブリンの亜種、進化種と観るのは誤りですが、不死性を持つアンデッドと戦闘だとゴブリンスレイヤーでは初めてです。
9巻で氷の魔女がヴァンパイアでしたけど、ヴァンパイアをアンデッドと観るかどうかは評価の分かれるところですし……。
例に漏れず不死性があるモンスターはどうやって不死性を消すかが鍵なんですけど、浄化すると思ったらこういうのもあるのかってことで面白かったです。
ヴァルキリープロファイルのゴーラ教団本部的というか。
ガンヴォルトのエリーゼ的というか。

終盤に出てきた新たなゴブリン。
もうゴブリンが飛行船に乗って襲ってくる展開が今後出てきてもおかしくないなって思いました。
要は覚知神が智慧を授ければ何でもありですし。
攻略方法は見応えがあって良かったです。なんというかボス攻略的な面白さがありましたし。




以上、10巻の感想でした。
色んな要素で溢れつつ、ピックアップして感想を述べると思ったよりも長文にならなかったです。

次は11巻、季節は夏。
砂漠のお話のようで。ファンタジー作品に出てくる地形を網羅していってますね。
今後宇宙空間か機械文明も登場するんじゃって期待しちゃいます(FF1脳)。