今回はゴブリンスレイヤー11巻……ではなく、外伝イヤーワンの1巻の感想記事です。
いつも通りですがネタバレだらけですのでお読みの際はご注意ください。

また、わたしはイヤーワン1巻部分はラノベ版を読む前にコミカライズ版を読破済みです。
ですので今までの感想記事と感想の切り口が異なります。ご了承ください。

GSY1

ゴブリンスレイヤー外伝:イヤーワン(GA文庫) 
著:蝸牛 くも先生
イラスト:足立 慎吾先生
キャラクター原案:神奈月 昇先生

絵師さんは神奈月昇先生ではなく、足立慎吾先生です。
神無月先生のタッチに比べると男女問わず若い……というより幼い印象です。
イヤーワンは本編1巻の5年前のお話なので、良い方向に影響を与えていたと思います。

神無月先生は神曲奏界ポリフォニカや魔王と踊れシリーズでよく存じていたのですが、足立先生は存じなかったです。
そこで検索をかけてみると……プロのアニメーター、キャラデザの方だったのですね。
というか手掛けられた作品の7割くらいよく知ってます……滅茶苦茶凄い方じゃないですか。

足立先生のwikipedia記事



感想に移る前にラノベ版とコミカライズ版の違いについて軽く触れます。

『ゴブリンスレイヤー』の場合、ラノベ版は地の文を用いて心理描写が、そして四方世界の外側、神のゲーム盤である描写がとても多いです。

コミカライズ版はエログロ描写が詳細になっているのが大きな特徴です。
また、ラノベ版に比べてコミカルに、そして可愛く描かれている場面が非常に多いです。

ゴブリンスレイヤー外伝:イヤーワン 1巻部分の場合、大きく差別化が図られています。
ラノベ版はゴブリンスレイヤーさんが中心に描かれているので、ゴブリンスレイヤーさん以外のキャラがメインのパートは描写があっさりまたは淡泊なものになっています。

コミカライズ版はゴブリンスレイヤーさんが上で述べた他のキャラがメインのパートに凄く力が入れられています。
具体的にはロックイーター周りですね。
ラノベ版だとさらりと書かれているので事実はわかってもそれは形式的なデータに過ぎません。

しかしコミカライズ版は前後の描写が色濃く描かれているので、感情移入し易い人であればあるほど中盤の展開は心を抉って来るんじゃないでしょうか。わたしは抉られましたorzlll
ゴブリンスレイヤーってメインクラス以外のキャラ、つまりモブキャラに近づけば近づくほどあっさり退場しちゃいますからね……。


ラノベ版のイヤーワン1巻はコミカライズ版に無い大きなメリットとして、冒頭部分、

『そして世界は救われた(キャンペーンクライマックス)』

があります。
これは8巻で触れられている六人の英雄が死の迷宮に挑んだ時の物語ですね。
死の迷宮に挑んでいる時、8巻に登場する国王はどのような戦いをしていたのかが描かれます。
今までのお話と異なり、軍隊と軍隊の戦いでド派手でとても見応えがありました

あと上とは別に個人的にラノベ版を読んで実りのようなものを感じたのは、ロックイーターと戦う場面でブロブに襲われたのが女性の弓使いだと描写された地の文です。
コミカライズ版は特に性別には触れられてなくて、容姿から男性だと思ってましたので……。




それではここからはお話の感想を書いていきます。


牛飼娘

ゴブリンスレイヤーって牛飼娘だけでなく、女神官、妖精弓手、受付嬢、そして剣の乙女に女商人といわゆるヒロインポジションのキャラが何名か出てきます。
しかしイヤーワン1巻を読むと、牛飼娘のみがヒロインなんだとわかります。

本編(無印)において、ゴブリンスレイヤーさんが人間性を失っていてゴブリンスレイヤーと化している1巻からだんだんと仲間と触れ合い、人間性を取り戻していったのは言うまでもないです。
しかし本編の5年前が描かれるイヤーワンは牛飼娘も人間性を失っていたことがわかります。

つまりゴブリンスレイヤーさんがある種牛飼娘に依存性を見出していたように、
牛飼い娘もまた、ゴブリンスレイヤーさんに依存性を見出しています。

つまり共依存の関係ですね。
だからこそ、牛飼娘の伯父さんはゴブリンスレイヤーさんを邪険に扱うことはできないのです。
5年前から止まった歯車を動かしてくれたのもまた、ゴブリンスレイヤーさんなのですから。

ですのでゴブリンスレイヤーのエンディングは2人が結婚するか2人が別れると予想しています。
共依存の関係を脱却するかより強固で深い共依存になるかーですね。



ゴブリンスレイヤーさん

本編では断片的に描かれていた、故郷が滅んだあとが克明に描かれています。
復讐の鬼と化していくだけでなく、いかにゴブリンの魔の手から逃れてお師匠様に拾われたまでが描写されていて、死体に対してドライになってしまったのは姉や隣の夫婦を見た時の描写で明らかです。

> 姉が姉でなくなってから三日が過ぎた。だから彼は動くことに決めた。
> 姉は決してここを動いてはダメよと言っていたけれど、その姉はもう姉ではない。
> 例えば解体された肉と、生きる牛を、イコールで結べるだろうか? 腸詰めと豚でも良い。
(イヤーワン1巻、No.252-255より引用)

本編1巻の冒頭で女神官を助けた時は、銀等級のゴブリン特化型の猛者として猛威を奮いました。
5年前はというと、まだ冒険者に成り立ての白磁等級で戦闘の経験値が足りていません。
いわゆる教科書タイプですね。
知識は知っていても環境によってアレンジをかける臨機応変さが身に付いていません。

本編のような知略と臨機応変さで乗り切る前は泥臭く少しずつ経験を、糧を得ていったことがよくわかる内容でした。
それはゴブリンに対してだけではなく、冒険者としてもゼロからのスタートです。
なにせ村が滅ぼされてからは御師匠様に育てられている間、人間性が身に付いていません。
社会性が無いのです。コミュ障と言っても良いでしょう。会話が、できないのです。

だから受付嬢がゴブリンスレイヤーさんに惹かれていくのがよくわかります。
最初は会話すらままならなかったのに、年月をかけて人言葉が少なくともどういう人物なのかわかっていったのですから。
受付嬢から見れば、ゴブリンスレイヤーさんは冒険者であると同時に『人間』なのです。

そして駆け出しの頃はパーティを組んでいたことも判明します。
しかしこの時はゴブリンを倒すという共通目的を持った者同士であり、パーティプレイを組むことで効率が。指揮が、戦略の幅が広がることをゴブリンスレイヤーさんは知るところまで進めてません。まだゴブリンに対しての経験値が浅く、ゴブリン以外に考える必要性、必然性が無かったからです。

ゴブリンスレイヤーさんがゴブリンをより良く識るために、ゴブリンを『研究』する場面はまさに人間性を失っていたからこそ行えたんじゃないかなと思いました。


そうして経験を経て挑んだ終盤の村の防衛戦はコミカライズ版も凄かったですが、ラノベ版も凄かったです。
裏打ちというか学んだ成果というか。
考えながら手を打っていく試行錯誤感も良かったです。
最高でも最強でもないけど、最良を目指したのがよくわかる描写がとても多いです。
機械的に動きながらも人間的に悩んでいるのもとても良かったです。


さて、イヤーワンのゴブリンスレイヤーさんと本編1巻のゴブリンスレイヤーさん。
比較すると試行錯誤や経験不足以外で大きく異なるところがあります。

それはゴブリンスレイヤーさんの台詞。
比較すればよくわかりますが、イヤーワンのゴブリンスレイヤーさん、ゴブリンを殺す時に感嘆符を多用しています。つまり感情が攻撃に乗っているんですね。
即ちそれは、機械的になろうとする前であること。
機械的になっていき、完成されたのが本編1巻のゴブリンスレイヤーさんです。

憎悪が経験によって武器(知識・戦術)になっていったのがよくわかります。
5年間の修行。5年間というゴブリン狩り。10年に渡る長き戦いだったのです。

あとこの場(枠)で書きますが、ゴブリンスレイヤーさん、勇者と過去に会っていたんですね……しかも勇者が勇者として目覚める前です。というか1巻の時点で勇者15歳ですか。



槍使い他銀等級の冒険者になる者たち

第十位、白磁等級から第三位、銀等級になるにはどれくらいの月日が必要なのでしょうか。
ひたすらゴブリンのみ狩り続けてきたゴブリンスレイヤーさんでは参考材料になりません。
ゴブリンスレイヤーさんはイレギュラーですから。

しかしイヤーワンには槍使い他、本編に登場する辺境の街の銀等級冒険者が全員登場します。
それも5年前はみんな白磁等級、第十位でした。
つまり実力と経験さえあれば、5年あれば銀等級の冒険者になれるのです。

……よくよく考えると相当数の年月が必要だと仮定すると、特に前衛職は肉体の成長期になれないときつそうだなって思いました。
年配の方の後衛職が出てくるのはある種、理に適っていたんだなぁと思いました。



ロックイーター周り

どうしてもラノベ版だと描写が淡泊なのでコミカライズ版ほど脅威なのだと感じにくかったです。
ただラノベ版の良かったところとして、半森人の野伏が前触れも無くいきなり死ぬので呆気なさのリアル具合で恐怖感がより色濃かったです。

ただ悲しいことに若い戦士の感情の吐露の描写が希薄なので死んだ事実だけが独り歩きしている印象がとても強かったです。ですので終盤、ロックイーターに一矢報いた時の描写もそうですが描写不足感が否めなかったです。
そういう意味でもロックイーター周りはコミカライズ版も併せてお読みになることを強くお勧めします。幸いなことに現在はマンガUP!というスクエニさん公式アプリでご覧になれますので、そちらも読んでみると良いのです。



女神官

女神官の若かりし頃……というか子供時代が描かれています。
よく読んでみると10巻の葡萄尼僧っぽい人もちゃんと登場していました。

あと今まで描かれていなかった、どうやって奇跡を授かるかって描写があったのがとても実りが大きかったです。今まではただただ漠然と描かれていましたからね……。



細かく思ったこと

火吹き山の魔法使いオマージュが出たのはちょっとニヤリとしました。
事実上、今までプレイしたのがにゃんたんのゲームブックと蠅声の王くらいなわたしですら名前を存じているゲームブックの金字塔ですからね。こういうわかるネタが出てくると嬉しいです。
ただそのためにより資産を投じないといけない、というのは勘弁です。あくまで元々知っていた知識が役に立った、程度が良いのです。

ゴブリンスレイヤーさんの鉄兜。
角の片方だけ欠けている理由が明かされるのですが、重心傾くならもう片方の角も何故折らなかったのかな、と思いました。

『そして世界は救われた(キャンペーンクライマックス)』ですが、このシーンだけ地の文のタッチがほんのり他と違うと思いました。
具体的にはほんのりニンジャスレイヤーの地の文風味を感じました。
多分わたしだけだと思いますハイ

立場は違えど、若い戦士がロックイーターを突き刺す挿絵とゴブリンスレイヤーさんがゴブリンを短刀で突き刺す一枚絵が合わせ鏡になっていて良かったです。
上を向いて突き刺すのは自分よりも遥かに格上を。
前を向いて突き刺すのは自分と同等を。
という対比になっていましたし。



以上、イヤーワン1巻の感想記事でした。
次の記事はイヤーワン2巻をお送りします。
2巻はコミカライズ版中途半端にしか読んでないので比較記事にはならないんじゃないかなぁと思います。

あと先に告知ですが、ゴブリンスレイヤー本編11巻を読む際に有志の方からバンパイアハンターDを履修材料として強く推されたので……買いました。

ガチで

注文履歴
(一応黒塗りしました)

中古と新品の値段が大差無かったので新品購入です。
あとで振り返ると12巻のドラマCD買える値段じゃんと若干顔が青くなったのはナイショです。
うう……今月は節制しようと思うのでした。