今回はゴブリンスレイヤー13巻の感想記事をお送りします。
まだ発売されて2週間と少しです。ようやく追いつけたな、といった感じです。

久しぶりに書く感想記事なので事実上のリハビリを兼ねています
12巻のような長文感想にはなりません。順路を立てて書いていないので読み難いと思います
全ての事柄に触れるのではなく、良かったことを順番に書いていく感じなので抜けが多いです。

というか今回一言で書いてしまうと、『ただただひたすらに楽しい巻だった』具体性を求められると答えに困窮するというか……

長文感想を期待されている方のご期待に添えません。何卒ご容赦ください。
(というか今までが長文感想過ぎたんだと思います(滝汗))

GS13

ゴブリンスレイヤー 13(GA文庫) 
著:蝸牛 くも先生
イラスト:神奈月 昇先生
ゴブリンスレイヤー13 (GA文庫)
蝸牛 くも
SBクリエイティブ
2020-10-14




さて、13巻は新旧様々なキャラが再登場してかなり豪華(?)な物語になっています
間接的にイヤーワンやダイ・カタナも触れられているので、外伝を読んでいるとより楽しめる物語になっている……のは過去巻もそうでしたね。

13巻はもう再登場することは無いんじゃーと思っていたキャラも再登場してビックリしました。

誰なのか? それは王妹です。
ポジション的に出し辛いと思っていました。
ピンチになることそのものがヤバい立ち位置のキャラですし……

あんなことをしましたが、根は善性で13巻で再登場した時はさらに性格が丸くなっていました。
けれどお茶目なところは相変わらずでホッコリしましたね。

それと過去の感想記事で触れていますが少し。

---ネタバレ開始---

まだ確定していませんが、女神官は王妹の双子の妹だと思われます。
ゴブリンスレイヤー――四方世界では双子は禁忌とされていて、妹である女神官は『棄てられた』とのこと。運命は巡り廻って結局2人を会わせてしまいました。

13巻では双子だとより強調させるようなイベントが発生しています。
ホント2人が並ぶと髪の毛の量と胸の大きさ以外は瓜二つですね……。

---ネタバレ終わり---

そして10巻の葡萄尼僧と12巻のダークエルフのお姉ちゃんの再登場。
特にダークエルフのお姉ちゃんが速攻で再登場したのは吹きましたし、よりによってそういう再登場するの!? というところから登場するのでコレはもうズル過ぎですよね。

ポジション的にダークエルフのお姉ちゃんはこれから何度も再登場が確約しましたし、ゴブリンスレイヤーさん御一行以外のパーティの面々もだんだん厚く、そして濃くなっていきました。



さて、ゴブリンスレイヤー13巻はあらすじだけ読むと、てっきり今回はWizardryから少し離れ、ダンジョンマスター系でネタが来るのかな? と予想していました。
しかし蓋を開けると今回ダンジョンマスターではなくゲームブックがメイン(ベース)ですね

グレイルクエストシリーズファイティングファンタジーシリーズが往年のゲームブックでは特に有名かと思います。児童書だとにゃんたんのゲームブックシリーズが有名だと思うんですが、今の主流、有名どころだとどうなるんでしょ……(滝汗

グレイルクエストシリーズもファイティングファンタジーシリーズも、現在は中古でも値が張るので中々入手し辛いです

13巻を読んで、まさか目次で死のワナの地下迷宮の文字を見るとは夢にも思いませんでした
13巻のメインイベント、『迷宮探検競技』のワードはファイティングファンタジーシリーズの1冊から来ているようです。

>「誰であれ、この毒牙の迷宮から生還した者には金貨一万枚と開拓村の永久統治権を────」
(13巻、位置No.2256-2257より引用)

このくだりも死のワナの地下迷宮から来ているようで、往年のゲームブックを読み親しんだ方々から見ると13巻の元ネタの大半がわかるようにできているようですし、さぞ2828して楽しまれているんだろうなぁと思います。
そういえば9巻でしたっけね。雪の魔女との戦い。あれもファイティングファンタジーシリーズから来ているらしいですね(前も書いた気がする)。

死のワナの地下迷宮-アドベンチャーゲームブック(6)
イアン・リビングストン
社会思想社
1985-11T


迷宮探険競技‾ファイティング・ファンタジー (21)
イアン・リビングストン
社会思想社
1987-08T





と同時に作者の蝸牛くも先生、いったいお年はいくつなんだ……と若干ひきつった笑いが浮かびました。ネタの網羅が凄すぎるんですよ……どこまで手広くしてらっしゃったんでしょうか。

ちなみに火吹き山の魔法使いなど、いくつかの往年の名作は形を少し変え、コンシューマやPCゲームとしてリバイバルしています。


そして死のワナの地下迷宮や迷宮探索競技もコンシューマやPCゲームとしてリバイバルしています。


現在では幻想迷宮ゲームブックとして、国産の過去の名作や新作が安価で入手可能です。
しかも電子書籍の性質上、パラグラフの管理が非常に楽になりましたので是非お手にとってみられることをお勧めします。

断頭台の迷宮 ゲームブック
清水龍之介
FT書房
2014-11-10



今回の『ダンジョン探索』パートは表と裏の二構成です。
表は死のワナの地下迷宮がベースに。


秘密通路から続く一連のダンジョン。
今回の新キャラは嵐(テンペスト)の名を冠していること
始まりの一字(α)

そしてキーワード、ブラックオニキス

以上のことから今回メインで大きな元ネタだろう裏のゲームブックは、スーパー・ブラックオニキスだと思われます。ブラックオニキスをベースにしたゲームブック版ですね
なお、スーパーブラックオニキスはリメイクされ、電子書籍ブラックオニキス・リビルドとして、なんと500円で入手可能になっています。


始まりの一字(α)~は主人公、テンペストはA戦士とも表記されるところから来ているのかな? と思いました。
電子書籍版まだ買ってませんが、元ネタ探しをするとあれこれヒットするもんですね。


ゲームブックがベースなシナリオ運びなので『14へ行け!』が出てくるかなーと思ったら出て来ませんでした。
代わりにゲームブックではないですが、明確に『いとしいしと』ってワードが出てきました
つまり今回大活躍した炎のゴブリンは元ネタアレなのかなぁと思いました
指輪じゃなくて杖でした、が……。



元ネタ考察はこれくらいにして、感想を書いていきます。

その前に今回の13巻、12巻よりもかなり短く感じました
ページ数に換算すると殆ど変わんないのですが、久しぶりにゴブリンスレイヤーを読んだこと。
そしてシナリオやキャラ運びがとても面白かったので短く感じた(=熱中した)んじゃないかなぁと思っています。

12巻はオムニバスのストーリーが一本のシナリオとして数珠繋ぎになっている、でした。
13巻はひとつのイベントを多方面から見たシナリオ、といった感じになっています。

何より今回良かったのはゴブリンスレイヤーさんがソロでゴブリン退治を行ったことです。
いったいいつ以来なんでしょうね……ゴブリンスレイヤーさんのソロプレイは。

牛飼娘を守りながら『ソロ』で雪の廃村で立ち回るのはありましたけど、結局2人パーティと言えますからね。誰とも会話せず、黙々とゴブリンを狩る、ではなかったのです。

> それはかつての雪山、あるいは地方村に赴いて幼馴染共々孤立した時の戦況に似ている。
> だが、似ているだけだ。
> あの時の彼は、追われる側だった。撤退する側だった。狙われる側だった。
> 今の彼は、小鬼を殺す者だ。
(13巻、位置No.3258-3261より引用) 

と地の文でも触れられていましたね。

パーティプレイがメインになったことで得られたこともあれば失われたこともあります。

それは緊張感。そしてミスに対するリカバリー難易度の差
パーティプレイなら自分のミスは他の人がカバーしてくれるケースは多々あります。
けれどソロプレイなら自分のミスは自分に直ぐに返ってきます。

> ずいぶんと昔のことのように思う、小さな村での戦いと違い、ここは洞窟の中だ。
> あの暗黒の塔で相手取ったゴブリンどもよりも、はるかに数は少ない。
> だが────……。
> ──────雑になっているな。
> 戦い方が、だ。
(13巻、位置No.3264-3266より引用)

今回のゴブリンスレイヤーさんのソロプレイは、そういう意味で『緩んだ』心を引き締めてくれたんじゃないかなーなんて思っちゃいました。

あと過去巻を読み直せばわかるんでしょうけど、ゴブリンスレイヤーさんが惜しんだ投げナイフ、初出どこなんでしょ……あの書き方(心情描写の地の文)から察するに、相当前なのは想像がつくのですが……。


今回は戦闘方面よりも各キャラの関係性、成長にスポットライトが当たっています。
そして各々が持ち得る知識の幅の差異が面白いです。
他の世界を知らないからこそ、果たしてそれが正しいのか、誰かに訊かないと正解なのか不正解なのかわかりません。
他の人が正解とも限りませんし、そもそも正解なんて存在しないのかもしれません。

ゴブリンスレイヤーさんの師匠、先生は一人です。
だから他の教え方や加減がわかりません。
自分自身がボーダーラインになるからこそ、迷宮の監督業は容赦がありません。

だからこそ他のメンバーが、受付嬢が加減を教えてくれます。
新米冒険者を殺すためではなく、新米冒険者を試すための迷宮を造るのが目的ですし。


脱線しますが、女騎士は良いキャラしているわ、とつくづく思いました。
バックボーンが過去巻で明らかになった女騎士ですが、全力で何もかもを楽しむ気概が表れていて読んでいて凄く楽しいです。

……しかし女騎士が新米冒険者と言い張るのは無理があり過ぎるでしょ(滝汗
まるでテーマパークでアトラクションを楽しむ少女っぽさのようなものを感じました。


そういえば今回の勇者パーティ御一行のバトルについて少し思ったことがありました。

>「生み出した分身に《分身》を唱えさせれば、より強力に己を増やせると思った者がいた」
(13巻、位置No.3773-3774より引用) 

>「その結果が、これだ」
> かくて愚かな魔術師は、天刑星の禁忌に触れたのだ。
(13巻、位置No.3781-3782より引用)

禁忌と書いてエラッタと読みます。
最初、今回のボスも含めてMTG辺りから来ているのかな? と最初考えました。
無限ループを組んで無限マナでなんやかんやして勝つ、ってありますし。

でも敵ポジの太歳星君に該当するクリーチャーがいないんですよね。ルビ含めて。
というか太歳星君って検索かけると割と有名らしく、じゃあ何から来ているんだろうと思いました。

そこで考え方を変えて、今回ゴブリンスレイヤーTRPGから逆輸入(?)される形でいくつか抜粋がありましたので、ゴブリンスレイヤーTRPGが元ネタ(?)なのかなと考えました。
今回大活躍した《小鬼(クリエイトゴブリン)》もTRPGの真言呪文リストで登場した呪文ですね

《分身(アザーセルフ)》は直ぐにビンゴしました。真言呪文の最初に掲載されてますね。
太歳星君のほうは残念ながらヒットせず。

さて、禁忌(エラッタ)に触れたってことは《分身》(アザーセルフ)が大暴れ(ぶっ壊れ)して後日能力修正を加えられた、と見立てることができます。

ゴブリンスレイヤーTRPGは多数のエラッタ項目があるようで、正誤表のページがありました。
《分身(アザーセルフ)》は297pなので検索をかけるも、ヒットせず。

おっかしいなぁと思いつつQ&Aの項目を読んだら、ありましたありました。

---引用(行を揃えるために空白の追加&削除の編集は加えています)開始---

質問:
《分身(アザーセルフ)》(⇒297頁)は、すでに自分の分身を生み出している場合にも、再び使用することはできますか?
また、分身が《分身》を使用することはできますか?

回答:
同名の呪文の効果は重複しない(同時に効果を現さない)ため、1人のキャラクターが《分身》で生み出す分身は、同時に1体しか維持できません。
2体目の分身を作った場合、達成値が最も高いもの(同値なら先に創られたもの)だけが残ります。分身が《分身》を使用した場合も、本体の分身を増やそうとしたものとして考え、同様に処理します。

---引用終わり---

その他《分身(アザーセルフ)》のQ&Aの項目は結構な数がありますので、多分当時質問が殺到したんだと思います。なのでQ&Aの答えでナーフがかかったんじゃないかなーと想像します。
《分身(アザーセルフ)》の説明ページだと分身体が《分身(アザーセルフ)》を唱えた場合のケースは書かれていませんでしたし。


……脱線し過ぎました。本筋に戻します。

今回、こうして13巻の感想記事を書いているんですが、なんていうか……今までの巻と違って感想が書きにくいです
つまらないとか面白くない、ってわけじゃないんです。
1~13巻の中で13巻が一番あっという間に読み終えてしまったので、なんというか引っ掛かりのようなものが無くて何書けば良いんだ状態です。

あれこれ考えたり思いながら読んだハズなのに、思い出せないのです。
例えるなら……そう、修学旅行に行って帰ってきたら空白のように思い出せない時間があるーみたいな?(わかり辛かったらごめんなさいorz)

なので今回の感想記事、だいぶ苦慮しながら書いています。
元ネタ網羅記事ってわけでもないので(というかわからないので)感想ってこんなに難しかったっけ……と頭を抱えています

そうそう、そういえば13巻はゴブリンスレイヤーさんの色恋沙汰に進展はありませんでしたが、周りのヒロインズがゴブリンスレイヤーさんに対する見方はより深くなっていった印象がありました。
特に受付嬢はかなりの好待遇ですね。挿絵の1枚はかなりドキッとしました。
ちひろさんベースだけどちょっとずつ離れて行っていく……そんな気がしました。

男性陣の関係性が深くなっていくのも良かったですね……。
特にゴブリンスレイヤーさん、重戦士、槍使いの3人の交流場面が大好きです
1巻から鑑みると信じられないほどの進展ですよね。
踏み込み過ぎない程度の良い塩梅で友情が描かれているのでこの3人の会話がもっと読みたいです。

そしてどちらかというとあまり出番が無かった、辺境の街に住む冒険者以外の人々の登場場面が結構あったのも良かったです。
なんというか13巻は冒険というよりは物語って感じがするんですよね。
誰彼が主人公というわけでなく、その街に住む人々、その街を訪れた人々全員が主人公といった感じに。だから今回ダンジョンマスターベースのお話では無かったですけど、ゲームマスターのようなポジションで物語を読むことができた……そんな感じがします。



ということで今回の感想、早いですがこの辺で一旦筆を置こうと思います。
後日加筆感想書く……かも?

結局ゴブリンスレイヤーはいつもと一緒で、ゴブリンを退治する物語なのでした、と言ってしまえばそれまで何ですが、各巻過程や元ネタが全く違うので面白いです。
手を替え品を替えよくこれだけネタを考えるなぁと舌を巻くばかりです。

そういえば次回、14巻は北海が舞台らしく、海がメインのお話になるのかなと期待が膨らみます。
過去に海がメインの冒険はありましたけど、あれ短かったですからね……海だからできるあれこれなギミックに超期待なのです。



……ジュピターゴーストで検索をかけたらアレがヒットするんですけど、太歳星君とどう繋がるのか……気になりますね。