あくまで主観ですが、ラノベといえば主人公がいて、ヒロインがいて、問題を解決しつつ関係性が深まる……というのがテンプレートのひとつだと思います。
ヒロインが複数いる場合は主人公君が問題を解決していくうちに第一、第二(以下略)ヒロインを攻略して好かれている……という感じになっているのではないでしょうか。

ではヒロインから見た主人公君はどうなるのでしょうか。
ヒロインが複数いれば、ヒロイン同士はお互いにライバル同士になるわけです。
ハーレム系や一夫多妻制度でもない限り、主人公君のハートを射止めることができるのは一名のみ。平穏の裏では骨肉の争い……なんてケースもあると思います。

さて、ゴブリンスレイヤー3巻はゴブリンスレイヤーがゴブリンを狩るお話です。
けれど各ヒロインがゴブリンスレイヤーを攻略するお話でもあります。攻略に成功できるのかどうかは別のお話。

ゴブリンスレイヤー 3(GA文庫) 
著:蝸牛 くも先生
イラスト:神奈月 昇先生
ゴブリンスレイヤー3 (GA文庫)
蝸牛 くも
SBクリエイティブ
2016-09-16


今回はゴブリンスレイヤーの3巻の感想です。
1巻、2巻と違ってシリアス度低めのラブコメ風味盛り沢山とタカを括ると大火傷します。
今まではあっちこっちの迷宮やら砦やらに出向いてゴブリンを殲滅してきましたが、今回はギルドのある街がメインでお話が進みます。それとは別でゴブリン退治もちゃんと行います。

比較的序盤でゴブリン退治を行った際、今までと動向が異なるのが何かしら伏線になるであろう展開は容易に想像できるのですが、それがどう絡んでくるのかは後半になるまでわかりませんでした。
というよりもカラー挿絵で描かれるヒロイン勢の艶やかな姿に魅了されまして、嗚呼今回はどちらかというとサブストーリーみたいな感じなのかなーと思っていました。
カラー挿絵の女神官えっちぃ過ぎですよ……。

実際その側面は強いと言えます。
ギルドのある街で大きな祭りが執り行われるのですが、そのお祭りの話と街を組み合わせたものがメインシナリオとして進行します。
牛飼娘、受付嬢、女神官の三名のヒロインを主軸にゴブリンスレイヤーの物語が展開します。妖精弓手が一歩引いていますが冒険の確約を行ったので次巻以降でメインヒロインとして大活躍するでしょう。きっとね。

面白いのは今まで登場したサブキャラがお祭りという土台に密接に絡んでくること。
主人公君はゴブリンスレイヤーですが、サブキャラにだって物語はあるのです。
生と死を賭けた壮大な戦いもあれば、恋の詩を紡ぐラブロマンスだってあるのです。
色恋沙汰から離れていたキャラにもスポットライトが当てられ、今までと違った魅力でぐいぐい読者を魅了していくと思います。実際女騎士は挿絵の破壊力もあって中々凄いことになっています。

さて、今までの殺伐とした殺戮劇と無縁かと思えばそうではありません。
後半になると切迫した展開を迎え、緩んでいた気持ちがグイグイ引き締まりました。
特に各ヒロインとの『デート』の最後を締めくくる受付嬢と良い感じに終わりそうと思ったらいきなりあの展開なので、思わずゴブリンってそこまで知恵が身に付いた者がいたのかと焦りました。
それは直ぐに違うのだと発覚するんですけど、じゃあ正体誰なんだよって当然思うわけです。正体を見て(読んで)「あああああああお前はあああああ!!!」ってなっちゃうわけです。
ゴブリンスレイヤーは率直に言えば職人肌で武骨で素朴で遊びがあまり無い人物です。
つまりやることなすこと容赦が無いわけです。彼にその気が無くても恨みを買うことはあるのです。
あの時の人物が何か後々やるだろうなーとは予想付くんですが、まさかこのタイミングでそれが行われるとは予想だにしていませんでした。

一気に小説全体の空気が変わったと思いました。お祭りの裏側ではシリアスな展開が仕組まれていて、急転直下、一気にゴブリンスレイヤーらしいお話になったのです。

1巻ではオーガやゴブリンチャンピオン、2巻では目玉のアレがボスの立ち位置として立ちはだかりました。今回はゴブリンではないボスが立ちはだかります。
これがまた燃えるんですよ。

ゴブリンスレイヤーでは神に祈りを捧げることで呪文を習得したり色々恩恵を受けることができます。では神に祈りを捧げない、反旗を翻した者を何て呼ぶのかと言えば、『祈らぬ者』と書いて『ノンプレイヤー』と読ませる凄さですよ
ノンプレイヤー――即ちNPCですよね。神に祈る者はプレイヤーキャラ、つまり盤上の神が見から見ればダイスで運命を左右される生命体ってわけです。神々から離れ、プレイヤー(登場人物)に牙を向ける。凄い王道ファンタジーというかなんというか、本当に作者様はTRPGが好きなんだろうなーってのが伝わってくるのです。

RPGなどのお約束ですけど、ボス戦は一対多になるわけです。
数で主人公側が勝る劣勢をポテンシャルやパラメータ、特殊能力でカバーすることで戦闘バランスが取られます。今回のボス戦もまた面白いイベント(特殊能力)でとても見応えのあるバトルになっています。



3巻は萌えと燃え、両方が味わえて一石二鳥の大満足となりました。
個人的には2巻のようなダンジョンハックのほうが好きなんですが、3巻のようなシティーアドベンチャー的展開。これはこれで全然アリだと思いました。
ゴブリンスレイヤーは1巻に比べればずっと柔らかくなりましたけど、それでもキャラがキャラなので各ヒロインと進展するのは牛歩の道だと思いますし、このゆっくりさがクセになって良いアクセントになっているお思います。

ダウナーイチャラブとは違いますけど、静かなイチャラブ大歓迎なのです。

ってことで3巻の感想でした。
作者様の引き出しの多さに脱帽なのです。固有名詞はゴブリンスレイヤーのみですけど、各登場人物のキャラクタがどんどん深みが出て、思わぬ組み合わせで化学反応が発生することも多いですし、次はどんな冒険が描かれるのだろうと超楽しみですね。
(5巻まで購入済みです)